宇宙は我が心中にあり 空海、心の言葉

私たちは一般に、言葉で考え、言葉で行動しています。たとえば、愛するという言葉を意識することによって、愛するという行為を生み出すことができます。それは、別の言い方をすれば、言葉のないところには、現実的な思考も行動も生まれないということです。言葉は、世界(存在)を創造するのです。空海は、この言葉のはたらきに注目し、そのはたらきの内に隠されている深い真実(事実性)を悟るところに仏となる可能性を見た、といえそうです。

仏教は、お釈迦様以来、真実の智慧を悟ることによって、ブッダ(覚者)となり、生と死をくり返す輪廻の世界の苦しみから解放されると考えています。空海は、この悟りの智慧が世界を創造する「言葉」の内に隠されていると考えました。そして、空海は、この「言葉」を私たちの外に求めるのではなく、私たち自身の心の中に求めたのです。真理は自分の外の世界ではなく我心の中にある、という確信こそが空海の原点です。

「含蓄」とは、噛めば噛むほど味わいのある深いことを意味しますが、空海の言葉はまさにそのような言葉であり、私たちの心に深くしみ込んでいく言葉だといえます。その言葉を読んでいると、空海の人々への思いやりの「心」と、事象に隠された本質を見つめる静かなまなざしを感じます。

思いやりといっても、決して耳に心地よいものではありません。真実の言葉の持つ厳しさがあります。しかし、静かに読み返すとき、その厳しい言葉の背後に人の心を本当に思いやる優しさのあることに気づきます。それは、空海の言葉が真実を通して人々を思いやる智慧の「心」から生まれているからです。

迷っている人々が真に求めているものは、揺るぎのない心の原点だといえます。空海の「心」の言葉は、私たちにこの原点を与えてくれるといえるでしょう。

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