智慧の世界へ ソクラテス編3 ~命を賭けて

投獄された時、ソクラテスの齢はすでに70を数えていました。そのソクラテスのもとを多くの弟子が訪れ、彼らは、「刑が許されて牢獄から出ることができるように貴族に働きかけるので、どうか牢獄から出て欲しい」)とソクラテスを説得します。「私たちの仲間の中には、金持ちも沢山います。貴族たちにお金を渡せば、刑が許され釈放されるので、そのようにして欲しい」と-。ところがその申し出に対しソクラテスは、「死刑の判決は不正な裁判によるものだけれども、賄賂を渡して逃げ出すのも不正なので、魂が汚れるのでいやだ」と断ってしまいます。しかし、それでも弟子たちはあきらめません。さらに、牢獄から出るように説得します。すると、ついにソクラテスは本音を語り始めます。そしてなんと驚いたことに「死にたい」と言うのです:

われわれを見守っていて
われわれは神々の持ち物のひとつであるとする。
それでもし、君の持ち物の家畜が君が死ねと言わないのに
勝手に自分で死のうとしたら君だってきっと、それに対して腹を立て
何か罰する手段があれば罰を与えはしないかね?
だからおそらくその意味で今の私の場合のように
神様が何かそうせざるを得なくさせて下さるまでは
自殺してはいけないというのは決して理屈にあわないことではない。

*******

実は、私は死にたいのだ。
自殺は神様の前に罪を犯すことになるのでそれはできない。
しかし、死刑を受けた
このチャンスに死にたい。

*******
何故なら、私は無知を克服するために
一生懸命に努力をしてきたけれども
無知から解放され真理を悟ることが出来なかった。
その原因は、体の欲望にある。
体の欲望がある限りは
体の欲望に惑わされて
これ以上、真理を悟ることは難しい。
この肉体がなくなってしまえば
そして、霊魂だけになり霊界に行けば
悟ることができるのではないか?
今はそのチャンスの時だ。
せっかく死刑の判決を受けて肉体を脱ぎ捨てて、
霊界に行き悟ることのできる機会が与えられたのに
このチャンスを逃すわけにはいかない。
だから、やっとチャンスを迎えたので
霊界に旅立たせて欲しい。
哲学者ならば、皆がそのように思うはずだ。

このように語ったソクラテスは、「死刑の時間になったのに私たちが話しているので、牢獄の看守たちが死刑を執行できずに困っている。だから、ここらでお別れをしよう。看守を呼んできなさい」と弟子たちを説得すると、看守の持ってきた毒杯を仰ぎ、帰らぬ人となったのでした。

このように生命を賭けて、無知を克服したい、真理を悟りたいと願ったのがソクラテスでした。そのようにしてまで真理を求めたソクラテスの結論は、「真理を見つめることの出来る目が曇っていては無知から解放されないし、無知を克服できないし、智慧の世界に至ることができない」ということでした。そのため、霊魂だけの世界である霊界に行けば、智慧の世界に至ることができると信じ、霊界に旅立ったのです。

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